サラリーマンやOL、パートタイマー、アルバイトなど会社に勤めている人が対象となる年末調整ですが、どのような手続きなのかできるだけ分かりやすくまとめてみました。
年末調整とは?
確定申告の代わりの手続き
所得税とは1年間の稼ぎに対して発生する税金です。これは日本に住んでいる全ての人に共通します。
1月から12月までの所得を求めて、そこから所得税を計算して納めるという一連の流れを確定申告といい、2月3月に自らが行う作業です。しかし、会社勤めの人はこの作業を会社が代わりにやってもらえます。これが年末調整です。
会社員の人が確定申告で所得税額を計算することも可能ですが、確定申告は全ての作業を自分で行わなければならないため非常に手間がかかります。自分にとっても年末調整はとても大切な手続きになるのです。
年末調整は納税というより精算
給与明細書を見ると、「所得税〇〇円」という記載がありますが、これは正式には源泉所得税といいます。1年終えてからまとめて所得税を徴収すると大きな負担になってしまうので、源泉所得税という形で毎月の給料から差し引いて、所得税の積立をしています。
この積み立てた所得税(源泉所得税)と年末調整で確定した所得税の差額を計算し、足りない場合は追加で徴収、多い場合は返金の手続きが行われます。そのため、年末調整で行われることは所得税の納税というより精算です。
年末調整のしかた、流れ
会社に書類を提出する
会社は本人の所得を把握していますが、それだけでは所得税の計算はできません。自分や家族の個人情報や減税の対象となる支出があるかどうかも必要です。年末調整が行われる前には、これらを申告するために専用の書類を会社に提出をしなければなりません。
- 扶養控除等申告書
- 保険料控除等申告書
(生命保険料、地震保険料、社会保険料控除などを受けるとき) - 配偶者控除等申告書
(配偶者控除、配偶者特別控除を受けるとき)
基本的にこの3枚の書類が出てきますが、必ず提出しなければならないのは扶養控除等申告書です。保険料控除等申告書と配偶者控除等申告書は減税の対象となる人だけが提出します。
保険料控除証明書がある場合には、保険会社などからの証明書の提出も必要になります。紛失してしまった場合には再発行をしてもらえますが、決められている書類の提出期限に送れないように余裕を持って用意しましょう。
書類の書き方については別のページで詳しくまとめています。
転職した場合には前職の源泉徴収票が必要
転職した年も新しい会社で年末調整を受けることができます。その場合、その年の前職の源泉徴収票を転職先に提出しなければなりません。
退職したときに受け取っていれば問題ありませんが、年末調整の時期に改めて前職の会社に請求をするとなると、書類の提出期限に間に合わないこともあります。そうならないためにも早めに請求をしておきましょう。
年末調整の時期
会社によっても異なりますが、年末調整の作業は12月もしくは年明けの1月にします。
会社の経理担当者はそれまでに受け取った書類を全てチェックしなければならないため、年末調整の書類の記入や提出は10月や11月に行います。早いところは10月中を書類の提出期限としているところもあります。
所得税の精算、還付金と源泉徴収票
所得税の精算は12月もしくは年明けの1月給与の支給と一緒に行われます。ほとんどの場合、確定の所得税より毎月の給与で差し引かれる源泉所得税の合計の方が多くなるため、給与に上乗せされて返ってきます。これを年末調整還付金と言ったりします。
還付金と同時に会社から源泉徴収票が渡されます。年間の給与の合計額や確定の所得税額、適用を受けた減税制度など年末調整の結果について記載されています。所得の証明にもなるため、住宅ローンやオートローンを組むときに金融機関に提出することもあります。
年末調整は住民税の申告でもある
会社はその人が住んでいる役所にも源泉徴収票を送っています。役所に送っているのは給与支払報告書というものですが、名前が変わっただけで源泉徴収票と全く同じものです。
送られてきた給与支払報告書から役所はその人の住民税の計算を行います。つまり、年末調整は住民税の計算のための作業でもあるのです。年末調整で受けた扶養控除や生命保険料控除などの減税制度は、所得税だけでなく住民税にも適用されます。
年末調整で受けられる減税制度
年末調整で書類を記入提出することによって受けられる減税制度は以下の通りです。
年末調整で適用を受けられない制度は確定申告をする
これの他に医療費控除や寄付金控除などがありますが、これらの適用は年末調整では受けられないので、会社から受け取った源泉徴収票を使って確定申告をする必要があります。
年末調整で適用を受けられない減税制度はこちらにまとめています。代表的なものとして医療費控除や寄附金控除などがあります。
住宅ローン控除だけは少し特殊
ローンを利用して住宅の取得をしたときの減税制度を住宅ローン控除1といいますが、この控除は最大10年間適用を受けられる制度2です。
初回(1年目)の住宅ローン控除については、確定申告をしなければ適用を受けられませんが、2年目以降は以下の必要書類を会社に提出することによって年末調整で適用を受けることができます。
- 年末借入残高証明書
(金融機関から発行される) - 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書
(税務署から発行される)