扶養控除など所得税の様々なところで「生計を一にする(同一生計)」という言葉が出てきますが、日常生活で使われる言葉ではありません。
このページでは「生計を一にする(同一生計)」の定義、範囲について具体例を用いながらまとめました。
生計を一にする(同一生計)
読み方について
漢字の読み方はこのようになります。
- 生計を一にする → せいけいをいつにする
- 同一生計 → どういつせいけい
両者とも意味は同じです。
税法上での定義
「生計を一にする(=同一生計)」とはどのように定義されているのでしょうか?
(生計を一にするの意義)
2-47 法に規定する「生計を一にする」とは、必ずしも同一の家屋に起居していることをいうものではないから、次のような場合には、それぞれ次による。
- 勤務、修学、療養等の都合上他の親族と日常の起居を共にしていない親族がいる場合であっても、次に掲げる場合に該当するときは、これらの親族は生計を一にするものとする。
イ 当該他の親族と日常の起居を共にしていない親族が、勤務、修学等の余暇には当該他の親族のもとで起居を共にすることを常例としている場合
ロ これらの親族間において、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合- 親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、これらの親族は生計を一にするものとする。
出典 国税庁 所得税法基本通達2-47 http://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/01/07.htm#a-01
所得税法といった国が定めた法律では明らかにしていませんでしたが、国税庁が税務処理の指針を示している基本通達にはこのように明記されていました。
同居が条件ではない!
生計を一にする=同居と考えがちですが、必ずしもそうではありません。家族が学業や仕事などで離れて住んでいても金銭面で生活を援助しているときは「生計を一にする」に該当されます。
生活費の送金は振込か書留で
金銭面の援助をしている事実を証明するためには、銀行振込や現金書留で送金をして、振込票や通帳、書留領収書を残しておく必要があります。
振込票や通帳などは年末調整や確定申告で提出しませんが、税務署から問い合わせが来たときのために証明ができるようにしておかなければなりません。
同居していても生計を一にしていないとみなされる場合がある
二世帯住宅などで同じ建物に住んでいる両者が「明らかに独立した生活」をしていると、「生計を一にしていない」とみなされてしまいます。
「明らかに独立した生活」とは抽象的な言葉ですが、過去の裁判例では以下の点で判断されています。
- 互いの生活費を負担しているか
- 水道光熱費、電話代の支払いが別となっているか
- 住民票や国民健康保険の世帯が分かれているか
- 土地や建物の所有者に家賃を払っているか
- 世帯ごとに不動産登記を共有持分で分けているか
アパートのような赤の他人同士でも生活できるような住宅であれば「生計を一にする」に該当しないこともありますが、一般的な二世帯住宅ならほとんどが該当します。
生計を一にするに該当する?しない?
具体的に認められる例と認められない例をまとめてみました。
「生計を一にする」と認められる例
- 10歳の子と妻と3人で一緒に暮らしていて、夫が養っている。その場合の夫と子、夫と妻
- 80歳の母と一緒に暮らしていて、子が母を養っている。その場合の親と子
- 子が大学生で実家を離れて暮らしている。生活費の送金や学費の負担は親が行っている。その場合の親と子
- 離婚後に元妻が引き取った子の養育費を元夫が負担している。その場合の元夫と子
- 離れて住んでいる親に子が毎月生活費を送金している。その場合の親と子
- 会社員の子が実家から離れて住んでいる。子が休みの日には実家に戻って生活をしている。その場合の親と子
- 再婚し妻の17歳の連れ子と3人で一緒に暮らしている。その場合の夫と子、夫と妻
- 夫が単身赴任で妻と子と離れて住んでいて、夫は生活費の送金を行っている。その場合の夫と妻、夫と子
生活費を援助していれば、海外に留学している子にも認められる
留学などで国内に住んでいない家族であっても、生活費などを援助している状態であれば「生計を一にする」と認められます。
しかし、海外にいる期間が1年を超えてしまうと、その親族は非居住者となってしまい、送金資料や親族関係書類を提出しなければなりません。
詳しくはこちらでまとめています。
「生計を一にする」と認められない例
- 二世帯住宅などで親と子が同じ家屋に住んでいるが、互いに完全に独立した生活を営んでいる。
- 離れている住んでいる親に対し、子が生活費等の送金がない
「生計を一にする」を要件としている主なもの
「生計を一にする」が要件となっている主な所得税の制度は以下のとおりです。リンクをクリックすると、その制度の詳しい内容についてまとめています。