所得税や住民税の減税制度のひとつである医療費控除についてまとめてみました。
医療費控除とは?
医療費の支払いがあるときに適用できる
国税庁のwebサイトには以下のように記載されています。
1 医療費控除の概要
その年の1月1日から12月31日までの間に自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために医療費を支払った場合において、その支払った医療費が一定額を超えるときは、その医療費の額を基に計算される金額(下記3参照)の所得控除を受けることができます。出典 国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm
つまり、1月から12月までに一定の額を超える医療費があったときに、所得税や住民税の優遇を受けるという制度です。平成30年に支払った医療費は平成30年にかかる税金だけが対象となります。
対象となる医療費
医療費控除の対象となる支払いは、病院で負担したような一般的な医療費だけでなく幅広い範囲で認められています。
保険診療
- 病院や歯科医院の治療費
- 柔道整復師や鍼灸師などの施術費
- 手術費用、入院費用
- 医薬品の購入費
- 出産費用
- 介護老人サービス
このような公的医療保険の適用を受けられる診療は全て医療費控除の対象となります。
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自由診療
病院で発生した費用であっても、保険が効かない診療(自由診療)は一部しか医療費控除の対象にはなりません。主に美容や健康増進目的の施術や診療、健康診断費用、予防接種費用などは対象にはなりません。
詳しくはこちらのページでまとめています。
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医薬品
病院で処方された薬だけでなく、ドラッグストアや薬局で購入した市販薬も医療費控除の対象になります。詳しくはこちらのページでまとめています。
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物品の購入
病気や怪我の治療、療養のために購入した物品は医師の処方がなくても対象となります。
市区町村などからレンタルした介護福祉器具は対象とはなりません。
交通費、通院費
通院のための電車代やバス代、歩行が難しい人のタクシー代は控除の対象となります。
ただし、通院のためであっても、自家用車のガソリン代や高速道路料金、時間貸駐車場代は対象とはなりません。詳しくはこちらのページでまとめています。
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証明書が必要なもの
以下の支払いについて医療費控除の対象とするには医師などの証明書が必要になります。証明書は申告書と一緒に添付します。
支払い | 証明書など |
寝たきりの人のおむつ代 | おむつ使用証明書 |
温泉利用型健康増進施設の利用料金 | 温泉療養証明書 |
指定運動療法施設の利用料金 | 運動療法実施証明書 |
ストマ用装具の購入費用 | ストマ用装具仕様証明書 |
B型肝炎ワクチン接種費用 | 医師の診断書 |
白内障等の治療にかかる眼鏡の購入費用 | 処方箋 |
在宅療養の介護費用 | 在宅介護費用証明書 |
一緒に暮らしている家族の医療費も対象となる
控除の対象となる医療費は本人のために支払った金額だけでなく、生計を一にする配偶者や親族1のための金額も対象となります。
一緒に暮らしている家族だけでなく、離れて住んでいても生活費を送金していればその人にかかった医療費も計算に入れることができます。
扶養控除や配偶者控除の適用は関係ない
一緒に暮らしていても夫婦で共働きだったり、子どもが社会人であった場合は、配偶者控除や扶養控除の適用を受けることができません。
しかし、このような扶養控除などの対象にならない家族の医療費も対象となります。
年収が高い人で適用すべし
家族がそれぞれ医療費控除を適用するより、家族の分を年収が一番高い人がまとめて適用をした方がより大きく税金を減らせます。
年金受給者の親の医療費も所得が高い本人で適用をした方がより大きな節税となります。
補填される分は対象にならない
出産費用や入院費用などを自治体や保険会社が補填した分の金額は対象になりません。医療費から出産育児一時金や保険金、高額療養費を差し引いた本人の負担分が対象となります。
ただし、出産手当金や傷病手当金、見舞金などその期間中の生活費や給料を補填する性格のものは、医療費の補填ではないため除外されます。
控除額の計算方法
計算式
対象となる医療費の合計がそのまま控除額とはならず、決められた計算式から求めます。
計算式
- 医療費控除額(最大200万円)=
医療費 - 補填される金額 - 10万円
10万円を超えるところからが控除額となります。医療費が10万円以下のときは適用を受けられません。
総所得金額等200万円未満の人
総所得金額等が200万円未満のときは計算式が変わります。
計算式
- 医療費控除額(最大200万円)=
医療費 - 補填される金額 - 総所得金額等 ✕ 5%
医療費が10万円を超えていなくても医療費控除を適用できることがあります。
住民税も同じ
控除額の計算は住民税の医療費控除も同じになります。
未払いの医療費は対象にならない
その年に支払った医療費が対象になります。入院費用や高額な医療費などで未払いの医療費があるとき、未払い分は翌年以降の控除の対象となります。
借金、医療ローンをした場合
借金をして医療費を支払った場合、借金完了日ではなく、病院に対して医療費の支払いをした日で判断をします。医療ローンも同様にローンの契約日で判断をします。
クレジットカードを利用したとき
クレジットカードも借金と同じ考え方になるので、カードを利用した日で判断をします。
セルフメディケーション税制と一緒に適用できない
平成29年より創設された新しい医療費控除「セルフメディケーション税制」と一緒に適用を受けることができません。
どちらも適用を受けられるときは、計算をしてみて控除額が大きい方を選択しましょう。
医療費控除の適用を受ける方法、申請用紙について
ただ支払いをしているだけでは減税を受けることはできません。確定申告で手続きを行うことによって適用が受けられます。
確定申告で受ける
翌年の2月3月ごろに自分で確定申告書を作成して税務署に提出します。申告書第一表と第二表、医療費控除の明細書といった申請用紙に必要事項を記入することによって適用を受けることができます。
申請用紙の書き方についてはこちらでまとめています。
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領収書や医療費のお知らせが必要になる
その年に支払いがあったことを明らかにするために、領収書や健康保険組合から発行される医療費のお知らせ2が必要になります。保険診療では領収書と医療費のお知らせどちらを使っても構いません。
領収書は申告書と一緒に税務署に提出する必要はありませんが、申告をしてから5年間保存をしなければなりません。
住民税も自動的に減税される
確定申告のデータは、自動的に住んでいる市区町村の役所に送られます。役所はそれに基づいて住民税の計算を行うため、確定申告を行えば、所得税だけでなく住民税の医療費控除も受けたということになります。
年末調整では受けられない
生命保険料控除や地震保険料控除は年末調整でも適用を受けることができますが、医療費控除は年末調整で適用を受けることができません。
適用を受けるには会社員の人であっても確定申告をする必要があります。