所得税や住民税の減税制度のひとつである配偶者控除と配偶者特別控除についてまとめてみました。
配偶者控除・配偶者特別控除とは?
条件を満たす配偶者がいるときに適用できる
配偶者控除とは?
国税庁のwebサイトには以下のように記載されています。
1 配偶者控除の概要
納税者に所得税法上の控除対象配偶者がいる場合には、一定の金額の所得控除が受けられます。国税庁 No.1191 配偶者控除 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1191.htm
配偶者がいるときに所得税や住民税の優遇を受けるという制度ですが、一定の条件を満たさなければなりません。
配偶者特別控除とは?
国税庁のwebサイトには以下のように記載されています。
1 配偶者特別控除の概要
配偶者に38万円を超える所得があるため配偶者控除の適用が受けられないときでも、配偶者の所得金額に応じて、一定の金額の所得控除が受けられる場合があります。国税庁 No.1195 配偶者特別控除 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1195.htm
配偶者控除を適用できないときでも、ある一定までの条件を満たせば、所得税や住民税の優遇を受けるという制度です。
適用はどちらかになる
配偶者控除と配偶者特別控除は一緒に受けることはできません。
- 配偶者控除の適用を受ける
- 配偶者特別控除の適用を受ける
- どちらの適用も受けられない
つまり、配偶者がいる人は上の3つの内のどちらかに当てはまるということになります。
条件とは?
配偶者控除や配偶者特別控除の適用を受けるには以下の要件をすべて満たさなければなりません。
- 民法上の配偶者であること
- 本人と配偶者が生計を一にしていること
- 本人の合計所得金額が1,000万円以下であること
- 配偶者の合計所得金額が123万円以下であること
- 他の人の扶養控除の対象になっていないこと1
分かりづらい言葉もあるので、ひとつずつ説明します。
1.民法上の配偶者
配偶者とは役所に婚姻届を提出している人に限ります。内縁関係や事実婚での配偶者は該当しません。
また、最近広まりつつある同性パートナーシップ宣誓をしたパートナーも控除の対象になりません。
2.本人と配偶者が生計を一にしている
「生計を一にしている」とは同居していることが絶対条件ではありません。単身赴任などで一緒に住んでいなくても生活費を渡している場合には「生計を一にしている」に該当します。
3.本人の合計所得金額が1,000万円以下
合計所得金額1,000万円以下は言いかえると、1年間の給与の収入が1,220万円以下ということです。年収1,220万円を超える高所得者の人は専業主婦の配偶者がいても配偶者控除の適用を一切受けられません。
事業所得や不動産所得など給与以外に所得がある人の合計所得金額についてはこちらのページでまとめています。
本人の所得が要件となっているのは配偶者控除や配偶者特別控除だけで、扶養控除や障害者控除には一切ありません。
4.配偶者の合計所得金額が123万円以下
合計所得金額123万円以下は言いかえると、1年間の給与の収入が201万6千円未満ということです。
配偶者のパート収入が年間201.6万以上になってしまうと、配偶者特別控除を受けることができなくなります。
税制改正で平成30年から、合計所得金額76万円までだったのが123万円と大きく変わり、より広い範囲で適用を受けられるようになりました。
5.他の人の扶養控除の対象になっていない
配偶者が他の人の扶養控除いると、配偶者控除や配偶者特別控除の適用を受けることはできません。
その年の12月31日で判定する
配偶者かどうかは12月31日時点で判定します。つまり、他の要件を満たせば、入籍した年から配偶者控除や配偶者特別控除の適用を受けることができます。一方、離婚をしたときは、その年から適用できなくなります。
死別の場合は亡くなった日で判定する
ただし例外があり、配偶者が死亡した年はその配偶者が亡くなった日で判定します。つまり、死別したときは、他の要件を満たせばその年も適用できます。
控除額の計算
控除額の一覧
本人の合計所得金額と配偶者の合計所得金額によって控除額が決まります。
例えば、夫の所得が600万円、妻の所得が108万円のときは、夫が受けられる配偶者特別控除額は16万円となります。
配偶者の合計所得金額 | 本人の合計所得金額 | 区分 | ||
900万円以下 | 900万円超 950万円以下 | 950万円超 1,000万円以下 | ||
0円以上 38万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 | 配偶者控除 |
38万円超 85万円以下 | 配偶者特別控除 | |||
85万円超 90万円以下 | 36万円 | 24万円 | 12万円 | |
90万円超 95万円以下 | 31万円 | 21万円 | 11万円 | |
95万円超 100万円以下 | 26万円 | 18万円 | 9万円 | |
100万円超 105万円以下 | 21万円 | 14万円 | 7万円 | |
105万円超 110万円以下 | 16万円 | 11万円 | 6万円 | |
110万円超 115万円以下 | 11万円 | 8万円 | 4万円 | |
115万円超 120万円以下 | 6万円 | 4万円 | 2万円 | |
120万円超 123万円以下 | 3万円 | 2万円 | 1万円 |
夫婦ともに給与所得者(会社員、パートタイマー)のときは下をクリックしてください。所得を給与収入に置き換えた表が表示されます。
配偶者が70歳以上のときの控除額
配偶者の年齢が70歳以上で配偶者の所得が38万円以下のときは控除額が大きくなります。これを老人加算といいます。
配偶者の所得 | 本人の所得 | 区分 | ||
900万円以下 | 900万円超 950万円以下 | 950万円超 1,000万円以下 | ||
0円以上 38万円以下 | 48万円 | 32万円 | 16万円 | 配偶者控除 |
配偶者の年齢が70歳以上でも配偶者の所得が38万円を超えるときは、上の表の控除額と同じになります。
配偶者控除と配偶者特別控除の違い
配偶者控除か配偶者特別控除かどうかは、配偶者の合計所得金額によって決まります。
- 配偶者控除 → 配偶者の合計所得金額が38万円以下
- 配偶者特別控除 → 配偶者の合計所得金額が38万円超 123万円以下
合計所得金額が85万円までなら、配偶者控除と配偶者特別控除で控除額が全く変わりません。そのため、両者の違いをあまり意識することはありませんが、以下の違いがあります。
老人加算があるのは配偶者控除だけ
配偶者が70歳以上のときに控除額が上がるのは配偶者控除のときのみです。配偶者特別控除を適用するときの老人加算は一切ありません。
配偶者特別控除のときは障害者控除を適用できない
家族に障害があったときの障害者控除が適用できるのは、その家族の合計所得金額が38万円以下(給与収入で103万円以下)のときに限ります。つまり、配偶者特別控除を適用するときは、配偶者が障害があったときの障害者控除を適用することはできません。
配偶者控除、配偶者特別控除の適用を受ける方法
要件を満たしているだけでは減税を受けることはできません。年末調整や確定申告で手続きを行うことによって適用が受けられます。
年末調整で受ける
会社員の人は、10月11月ごろになると勤務先から年末調整の書類が配られ記入を求められます。その配られた書類のひとつ「配偶者控除等申告書」に必要事項を記入して提出すると、会社の方で配偶者控除や配偶者特別控除の適用の手続きが行われます。
書類の書き方についてはこちらでまとめています。
確定申告で受ける
翌年の2月3月ごろに自分で確定申告書を作成して税務署に提出します。申告書第一表と第二表に必要事項を記入することによって適用を受けることができます。
詳しくはこちらのページでまとめています。
申告書にマイナンバーを記入する
確定申告書には配偶者控除や配偶者特別控除の対象となる配偶者のマイナンバーも記入しなければなりません。
本人のマイナンバー通知カードのコピーは税務署に提出しなければなりませんが、配偶者のマイナンバー通知カードのコピーは提出する必要はありません。
住民税も自動的に減税される
年末調整や確定申告のデータは、自動的に住んでいる市区町村の役所に送られます。役所はそれに基づいて住民税の計算を行うため、年末調整や確定申告を行えば、所得税だけでなく住民税の配偶者控除、配偶者特別控除を受けたということになります。
- 本人が個人事業主などで配偶者を白色事業専従者としていたり、青色事業専従者として給与の支払をしている場合には配偶者控除や配偶者特別控除の適用を受けることはできません。 ↵