年金の所得についてまとめました。扶養の判定や確定申告での計算で必要になります。全ての年金が対象となるわけではありません。
年金所得(公的年金等の雑所得)とは?
年金にも税金がかかる
60歳から65歳までに始まる年金や定年退職後に支給される年金は「公的年金等の雑所得」という所得に区分され、給与や事業などと同じように所得税や住民税の対象となります。
対象となる年金
日本には様々な年金制度がありますが、公的年金等の雑所得に区分される年金は次の通りです。
- 老齢基礎年金(国民年金)
- 老齢厚生年金(厚生年金、共済年金)
- 企業年金
- その他、年金形式で受取る退職金
一般的に「年金」と言われるものはほとんどがあてはまります。
対象とならない年金
一方、公的年金等の雑所得に区分されない年金は2種類あります。
- 生命保険契約に基づく年金
- 非課税の年金
1.生命保険契約に基づく年金
保険会社から受け取る個人年金保険の年金です。この年金も所得税や住民税の対象となりますが、「雑所得」に区分され計算方法が異なります。
支給されている人は保険会社から「生命保険契約等の年金の支払調書」が発行されます。
2.非課税の年金
- 遺族年金
- 障害者年金
- 老齢福祉年金
- 増加恩給
- 傷病賜金
このような傷病者や遺族が受け取る年金は、所得税や住民税の対象にはならず非課税です。支給を受けていても、公的年金の雑所得の計算からは除外します。
公的年金等の雑所得の計算
計算式
公的年金等の雑所得 = 年金収入 - 公的年金等控除
このような計算式で求められます。公的年金等の雑所得を計算するには、はじめに年金収入を求めます。
年金収入
1月1日から12月31日までに支給された合計が年金収入です。
所得税や住民税、介護保険料、国民健康保険料(税)、後期高齢者医療保険料が差し引かれて支給されている場合がほとんどです。手取りの金額ではなく、税金や保険料が引かれる前の金額(額面金額)で計算します。
源泉徴収票で確認
翌年の1月に送られてくる公的年金等の源泉徴収票の「支払金額」が年金収入です。
複数ある場合は合計する
厚生年金と企業年金など複数の年金を受け取っている場合は、それぞれを合計した金額が年金収入です。
所得の計算
公的年金等の雑所得は年金収入の金額から一定の計算を行うことによって求めます。計算式は年金を受け取っている人の年齢が65歳以上かどうかで分かれます。
65歳以上
年金収入をAとします。
年金収入(A) | 公的年金等の雑所得 |
0円~1,200,000円 | 0円 |
1,200,001円~3,300,000円 | A-1,200,000円 |
3,300,001円~4,100,000円 | A×75%-375,000円 |
4,100,001円~7,700,000円 | A×85%-785,000円 |
7,700,001円~ | A×95%-1,555,000円 |
64歳以下
年金収入をAとします。
年金収入(A) | 公的年金等の雑所得 |
0円~700,000円 | 0円 |
700,001円~1,300,000円 | A-700,000円 |
1,300,001円~4,100,000円 | A×75%-375,000円 |
4,100,001円~7,700,000円 | A×85%-785,000円 |
7,700,001円~ | A×95%-1,555,000円 |
65歳以上の判定
65歳以上かどうかはその年の12月31日の時点で判断します。
年分 | 65歳以上の生年月日 |
令和元年 | 昭和29年1月2日以前 |
令和2年 | 昭和30年1月2日以前 |
計算機
自動計算機を用意しました。年齢を選択して、収入を入力すると求められます。
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公的年金等の雑所得と扶養
家族や配偶者が扶養控除や配偶者(特別)控除の適用ができるかどうかは公的年金等の雑所得の金額によって判断されます1。
控除の適用ができる基準額については詳しくはこちらのページでまとめています。
年金収入と確定申告
年金収入400万円以下なら確定申告はしなくていい
会社員の人のような年末調整が年金受給者にはないので、基本的には確定申告をして所得税の額を計算します。ただし、1月から12月までの年金収入が400万円以下の人は確定申告をしなくてもいいというルールが定められています。
詳しくはこちらのページでまとめています。
申告書の年金収入と公的年金等の雑所得
確定申告書では第一表の左上の欄に、年金収入と公的年金等の雑所得の欄があります。
収入は公的年金等とそれ以外で分かれていますが、所得は分かれていません。公的年金等以外の所得がある場合には、合計の金額が表示されます。
- 家族や配偶者が年金以外の所得があれば、それも合わせた上で判断がされます。 ↵