景気の悪化や終身雇用の考えの薄れにより、昨今では転職する方が多くいらっしゃいます。現在、日本では年間300万人ほどの方が転職をしております。転職時に直面する問題のひとつとして税金が挙げられます。
転職した年の年末調整についてまとめてみました。
年末調整のしかた
転職前の源泉徴収票を提出する
転職した人も転職先の会社で年末調整を行うことができます。ただし、前職の源泉徴収票を転職先の会社に提出しなければなりません。
年末調整は10月11月ごろに始まります。それまでに勤めていた会社から源泉徴収票を受け取り、扶養控除等申告書や保険料控除申告書などの書類と一緒に提出する必要があります。
源泉徴収票の提出がなければ年末調整を行うことはできません。
すぐに発行してくれないこともある
退職時に源泉徴収票を受け取るのが一番ですが、会社によっては時間がかかるところもあります。勤めていた会社に請求するときは余裕を持って行うことをおすすめします。
学生アルバイトから就職したときも同じ
大学や専門学校、高校など卒業して4月から就職した人で、1月から3月までにアルバイト収入があった場合には、アルバイト収入の源泉徴収票を就職先の会社へ提出しなければなりません。
アルバイトとはいっても、所得税や住民税では給与所得として扱いが同じになります。
年末調整ができなかったとき
確定申告をする必要がある
前職の源泉徴収票の提出が間に合わず年末調整できなかった場合には、翌年2月3月に確定申告をする必要があります。
- 前職の源泉徴収票
- 現職の源泉徴収票
- ボールペン
- 電卓
- 印鑑(認め印で構いません)
- 本人の身分証明書(運転免許証など)
- 本人のマイナンバーの通知カード1
- (家族のマイナンバー)2
- (還付先の金融機関の口座番号)3
自宅で確定申告書を作成して郵送で申告することも可能ですが、どうすればいいのか何もわからない場合は、以上のものを持って所轄の税務署に行けば申告書の作成や提出を行うことができます。しかし、2月3月の税務署は非常に混み合うので注意してください。
申告書の提出や作成を行う税務署は住んでいるところで決められています。
税務署の所在地(国税庁のwebサイト)
申告書は国税庁のwebサイトから印刷することも可能ですが、税務署で受け取ることができます。
確定申告は大変な作業である
申告書の作成から提出、納税まで全て自分で行わなければならないため、確定申告は慣れない人にとって大変な作業となります。確定申告をする状況にならないためにも、源泉徴収票の提出が遅れないように余裕を持って用意しましょう。
住民税の申告は必要ない
確定申告を行うと、申告書のデータは自動的に税務署から住んでいる市区町村の役所に送られます。役所はそれに基づいて住民税の計算を行うため、確定申告を行えば住民税の申告も行ったということになります。
そのため、住民税の申告は必要ありません。
確定申告をしないとどうなるのか?
会社員の人は毎月の給与で所得税が差し引かれていますが、その金額は概算額となっており、年末調整や確定申告で過不足の精算を行います。
確定申告をしなかったことによって所得税が足りていないと、税務署から問い合わせが来ることがあります。
転職したときの確定申告や年末調整
失業保険は所得税の収入には含まれない
失業保険とは積極的に次の仕事を探している時の生活費を補填するものです。そのため、失業保険は所得税が非課税です。転職後の年末調整や確定申告で申告する必要はありません。
国民健康保険や国民年金の支払いがあれば控除の対象になる
職に就いていない期間があると、一時的に国民健康保険や国民年金に加入していることがあります。国民健康保険料や国民年金保険料の支払いも年末調整や確定申告の対象となり、所得税や住民税を減らすことができます。
年末調整の書類や申告書の記入ではこれらの保険料も忘れないようにしましょう。詳しくはこちらでまとめています。
以前勤めていた会社から源泉徴収票がもらえない
源泉徴収票は必ず発行しなければならない
所得税法では以下のように定めています。
第二百二十六条
居住者に対し国内において第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等の支払をする者は、財務省令で定めるところにより、その年において支払の確定した給与等について、その給与等の支払を受ける者の各人別に源泉徴収票二通を作成し、その年の翌年一月三十一日までに、一通を税務署長に提出し、他の一通を給与等の支払を受ける者に交付しなければならない。(括弧書き略)e-Gov 所得税法 https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=340AC0000000033#1963
つまり、退職者など関係なく1年間に給与が発生した全ての人に対して、会社は源泉徴収票を発行しなければなりません。
それでも状況によってはもらえないことも
しかし、退職時に会社と喧嘩していたり、経理が杜撰だったりしていると、退職者に対して源泉徴収票が発行されないこともあります。
このような場合、最後にもう一度以前勤めていた会社に請求をして、そのときの日付や時間や相手を記録しておきましょう。
最終的には税務署に動いてもらう
それでも発行されることがなければ、最終的には税務署に動いてもらいます。
勤めていた会社の給与明細を準備して税務署に相談します。最終的に「源泉徴収票不交付の届出書」を提出すると税務署からその会社へ行政指導が入り源泉徴収票を発行してもらうことができます。
「源泉徴収票不交付の届出書」は国税庁のwebサイトでアップロードされています。直接税務署に行けば、そこで届出書の用意はしてもらえます。
簡単に受け取れる魔法の言葉
会社は税務署にこのような形で行政指導を受けることをとても嫌います。行政指導を受ければ会社の経理体制が疑われてしまい、それをきっかけで税務調査が行われるかもしれません。会社は税務署に対して目立つようなことはしたくありません。
そのため、請求するときに「もし、源泉徴収票を発行されなければ税務署に相談します。」と言えば、すぐに発行してもらえる可能性が高いです。
会社が倒産してしまっている
勤めていた会社が倒産してしまって転職する人もいます。会社は倒産したときでも源泉徴収票を発行しなければなりませんが、それが果たされないことが多いです。請求しようにも社長に連絡がつかずどうすることもできないこともあります。
そのようなときは、給与明細書を準備し税務署に相談をしましょう。税務署から何らかの措置があるはずです。給与明細書がないと給与額、源泉徴収額、社会保険料が全く把握できません。破棄することなく保存しておきましょう。