平成29年分の所得税の確定申告から給与所得控除額が一部改正されました。年末調整では会社が計算をしてもらえますが、手書きで確定申告書を作成する場合は自分で計算をしなければなりません。間違えてしまうとやり直しになってしまうので、しっかり押さえておきましょう。
給与所得控除が何かわからない人はこちらを参考にしてください
給与所得控除額の改正
今回の改正は年収1,000万円を超える人が関係してきます。給与所得控除額5%がなくなり、年収1,000万円を超える人は一律220万円が上限になりました。
平成28年分(旧)
給与収入金額 | 給与所得控除額 |
162.5万円以下 | 65万円 |
162.5万円超180万円以下 | 収入金額×40% |
180万円超360万円以下 | 収入金額×30%+18万円 |
360万円超660万円以下 | 収入金額×20%+54万円 |
660万円超1000万円以下 | 収入金額×10%+120万円 |
1,000万円超1,200万円以下 | 収入金額×5%+170万円 |
1,200万円超 | 230万円 |
平成29年分(新)
給与収入金額 | 給与所得控除額 |
162.5万円以下 | 65万円 |
162.5万円超180万円以下 | 収入金額×40% |
180万円超360万円以下 | 収入金額×30%+18万円 |
360万円超660万円以下 | 収入金額×20%+54万円 |
660万円超1000万円以下 | 収入金額×10%+120万円 |
1,000万円超 | 220万円 |
給与所得控除額は何度も改正されている
給与所得控除額は6年で3回も改正されています。平成28年分の給与所得控除額も1年で改正されました。
平成25年分から平成27年分
給与収入金額 | 給与所得控除額 |
162.5万円以下 | 65万円 |
162.5万円超180万円以下 | 収入金額×40% |
180万円超360万円以下 | 収入金額×30%+18万円 |
360万円超660万円以下 | 収入金額×20%+54万円 |
660万円超1000万円以下 | 収入金額×10%+120万円 |
1,000万円超1,500万円以下 | 収入金額×5%+170万円 |
1,500万円超 | 245万円 |
平成24年分以前
給与収入金額 | 給与所得控除額 |
162.5万円以下 | 65万円 |
162.5万円超180万円以下 | 収入金額×40% |
180万円超360万円以下 | 収入金額×30%+18万円 |
360万円超660万円以下 | 収入金額×20%+54万円 |
660万円超1000万円以下 | 収入金額×10%+120万円 |
1,000万円超 | 収入金額×5%+170万円 |
年収1,000円超の改正が行われている
3回の税制改正で行われいるのは全て1,000万円を超える人だけの給与所得控除額です。平成24年以前は給与所得控除額の上限はありませんでした。サラリーマンの年収が2,000万円でも3,000万円でも5%の給与所得控除がありました。
平成25年分からの改正で1,500万円を超える収入がある人は一律245万円という上限が設けられてしまいました。これはかなり大きな改正でしたが、その上限も3年で改正され、1,200万円を超える収入がある人は一律230万円となり、その上限も1年で改正され1,000万円超は220万円となりました。このように段階的に給与所得控除額が引き下げられています。
年収1,000万円超の税金は重くなっている
給与所得控除額が引き下げられると、所得が大きくなってしまうので、税金が大きくなってしまいます。つまり、政府はこの6年間で高収入のサラリーマンの税金の負担を大きくしているのです。段階的に下げているので、少ししか引き下げられていないように見えますが、平成24年と平成29年を比べると大きく引き下げられています。この段階的な引き下げをしているのは国民の反感を少しでも買わないようにしているためでしょうか。
年収1,500万円だとどれくらい税金は重くなっているか
年収2,000万円だと平成24年と平成29年でどれくらい税金が重くなっているのでしょうか。
年収2,000万円の給与所得控除額は平成24年では270万円、平成29年では220万円と50万円引き下げられています。扶養が2人程度で一般的な所得控除しかないとすると、所得税率は33%で住民税率は10%で合計43%です。
計算をすると、50万円×43%=21.5万円も税金が重くなっています(復興特別所得税を除く)。
所得税率は変わってはいませんが、給与所得控除というところで改正が行われているので、給与所得者だけ税金の負担が大きくなっています。
給与所得控除額の上限はさらに下がる
平成29年の12月に閣議決定された税制改正大綱では給与所得控除が再度引き下げられました。案が通れば平成32年から適用されます。
給与収入金額 | 給与所得控除額 |
162.5万円以下 | 55万円 |
162.5万円超180万円以下 | 収入金額×40%-10万円 |
180万円超360万円以下 | 収入金額×30%+8万円 |
360万円超660万円以下 | 収入金額×20%+44万円 |
660万円超850万円以下 | 収入金額×10%+110万円 |
850万円超 | 195万円 |
基礎控除は10万円引き上げられたので、給与所得控除額の上限は実質15万円引き下げられました。上限の年収もだんだん引き下げられていき、ついに年収850万円を超えるところから上限が設けられています。
会社員も節税を考えていかないといけない
このように高収入のサラリーマンの税金の負担は重くなっています。今後もまた給与所得控除額は引き下げられ、年収700万円くらいの人にも影響が出るかもしれません。最近はふるさと納税や確定拠出年金などサラリーマンでもできる節税も増えています。今後のためにも全ての給与所得者が節税を考えていかないとなりません。