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譲渡所得税

マイホームを買い換えたときの譲渡損失の特例とは?損益通算と繰越控除についてわかりやすく解説!

居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の特例についてまとめてみました。適用を受けられれば、所得税と住民税で大きな節税を行うことができます。マイホームを新しく買換えた人は確認しましょう。

居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の特例とは

居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の特例とは、マイホームを新しく買換えたときその売却した土地建物の譲渡所得がマイナスだった場合、確定申告で特例の適用をすると税金の優遇を受けるという制度です。

譲渡所得とは?

土地や建物を売却したときに発生する所得を譲渡所得と言います。

譲渡所得は、売却にかかる収入金額や売却した土地建物を取得したときの代金や諸費用から計算され、その所得がゼロ未満のとき譲渡損失となります。

土地建物の譲渡所得は別のページで計算機を用意しています。

売却したマイホームについて

  1. 生活の拠点となっているマイホームであること
  2. 所有年数が5年を超えていること
  3. 引越してから3年以内に売却していること

売却した土地建物には以上の要件をすべて満たさなければなりません。

1.生活の拠点となっていること

自分が所有している土地建物であっても別荘は適用を受けられません。

基本的に生活の拠点となっているかどうかは住民票で判断します。

2.所有年数が5年超

所有期間は売却日ではなく、売却した年の1月1日で計算します。実際の所有期間が5年を超えていても、ここでの判定は5年を超えないこともあります。

+ 判定計算機

マイホームを相続や贈与で取得したときは、前の所有者の取得した日で判定します。

3.3年以内に売却していること

引越してからすぐに売却していなくても、3年以内に売却していれば対象となります。

正確には、マイホームを引越した3年後の12月31日までに売却しているかどうかで判定するので3年を超えることもあります。引越してから売却するまでの間、貸し付けていたりしていても問題ありません。

取得したマイホームについて

新居(取得したマイホーム)にも要件があります。

  1. 売却した日の前年の1月1日から3年の間に取得していること
  2. ローンを組んで取得していること
  3. 床面積が50㎡以上であること
  4. 取得した日の翌年の12月31日までに生活の拠点となっていること

以上をすべて満たさなければなりません。

1.3年の間に取得

売却した日の前年の1月1日から売却した日の翌年の12月31日までに、日本国内の新居を取得していなければなりません。

例えば、平成30年にマイホームを売却した場合は、平成29年から平成31年までの3年間に取得することが要件です。マイホームは中古物件でも問題ありません。

2.ローンを組んで取得

新居を取得した年の12月31日に返済期間が10年以上の住宅ローンが残っていなければなりません。

つまり、ローンを組んで新居を取得していることが要件です。一括購入した場合は認められません。

住宅ローン控除と併用できる

ローンを組んでマイホームを取得したときに受けられる減税制度として住宅ローン控除があります。

住宅ローン控除は居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の特例と一緒に適用を受けることができます。

3.床面積50㎡以上であること

床面積は登記簿謄本で判断します。50㎡未満のワンルームマンションなどは認められません。

4.取得した翌年の12月31日までに生活すること

自分が所有している土地建物であっても別荘として購入した場合は対象となりません。

取得した日の翌年の12月31日までに住んでいればいいので、売却したマイホームを引越してからに一時的に別のところに住んでいても問題ありません。

基本的に生活の拠点となっているかどうかは住民票で判断します。

その他の要件

次の要件をひとつでも満たしてしまうと適用を受けられなくなります。

  • 売却先が身内である
  • 過去2,3年の確定申告で譲渡所得の特例を適用している

売却先が身内

マイホームを配偶者や直系血族、同族会社など身内に売却した場合は適用を受けられません1

新居の取得に関しては、身内からでも問題ありません。

譲渡所得の特例を適用している

これ以外にもマイホームの譲渡所得の特例はいくつかありますが、これらの特例を過去2年3年の確定申告で使っていると、特定居住用財産の譲渡損失の特例の適用受けることはできません。

  • 過去2年
    ・居住用財産の3,000万円特別控除の特例
    ・特定居住用財産の買換え、交換の特例
    ・居住用財産の定率分離課税の特例
  • 過去3年
    ・特定居住用財産の譲渡損失の特例
    ・居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の特例(この制度)

損益通算と繰越控除

この制度の適用を受けられると、譲渡損失の金額(譲渡所得のマイナス分)の損益通算もしくは繰越控除がされます2

損益通算

損益通算とは、給与所得や事業所得などに譲渡損失を差し引くことです。

通常、土地建物を売却したときの譲渡所得のマイナス分を給与所得や事業所得などに損益通算することは一切できません。

特例で損益通算することによって課税所得金額が下がるため、納めるべき所得税や住民税が減額されます。会社員の人は確定申告で適用を受けることによって所得税が還付されます。

繰越控除

その年の給与所得や事業所得などへの損益通算で引ききれなかった分がある場合には、翌年以降3年にわたり持ち越すことができます。これを繰越控除といいます。

持ち越すことによって、翌年以降に発生した所得にも損益通算がされ、納めるべき所得税や住民税が減額されます。

合計所得金額3,000万円以下に人に限る

繰越控除するときだけは、本人の合計所得金額が3,000万円を超えると適用を受けられなくなります。3,000万円を超える人はかなりのお金持ちに限られますが、合計所得金額についてこちらのページでまとめています。

ローンが残っていなければならない

翌年以降、再び繰越控除を行う場合は、その年の12月31日時点で住宅ローンが残っていなければなりません。

居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の特例を適用する方法

確定申告をする

マイホームを売却した翌年の2月3月ごろに自分で確定申告書を作成して税務署に提出します。申告書以外にも専用の明細書や書類の提出が必要になります。

  • 特定居住用財産の譲渡損失の金額の明細書
  • 特定居住用財産の譲渡損失の計算書
  • 売却した土地建物の売買契約書のコピー、登記簿謄本
  • 売却したマイホームの所在地の住民票(除票)
  • (戸籍の附票3

確定申告の時点で新居を取得している場合は、次の資料も必要になります。

  • 新居の土地建物の売買契約書のコピー、登記簿謄本
  • 新居のローンの残高証明書
  • (新居の所在地の住民票4

確定申告時には新居に住んでいない場合も

  • 売却をした翌年の12月31日までに新居を取得する
  • 新居を取得した年の12月31日にローン残高がある
  • 新居を取得した翌年の12月31日までに生活の拠点となっている

新居に関しての要件はこのようになっているため、確定申告の時点では新居をまだ取得していない、新居に住んでいないことが大いに考えられます。その場合には、予定や見込みで申告書を作成します。

確定申告後に予定や見込みが変わってしまい、居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の特例の要件に当てはまらなくなってしまった場合は、修正申告をしなければなりません。

住民税も自動的に減税される

確定申告のデータは、自動的に住んでいる市区町村の役所に送られます。役所はそれに基づいて住民税の計算を行うため、確定申告を行えば、所得税だけでなく住民税も減税されます。

繰越控除をするときは毎年確定申告

繰越控除を行った場合は、翌年も確定申告しなければ損益通算を行うことはできません。毎年確定申告する必要があります。

無理にする必要はない

通常の確定申告より難しくなるので、慣れていないととても大変な作業になってしまいます。

この特例は任意で受けられる制度です。無理に申告をする必要はありません。しかし、住宅ローン控除も一緒に適用を受けられるケースが多いため、申告しないとかなりもったいないことになるかもしれません。

  1. 婚姻届を提出していない内縁関係にある人など他人でも生計を一にしているときは適用を受けられません。
  2. 売却した土地が500㎡を超える場合には、その500㎡を超える部分に相当する金額は除かれます。
  3. 売却前に引越しをしていて、住民票に記載されている住所が売却した土地建物の所在地と異なるときは必要になります。
  4. 新居で生活していないときは必要ありません。生活の拠点となる予定の年月日は申告します。

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