個人の住民税は均等割や所得割の他に株式等譲渡所得割という税金もございます。あまり聞かない名前かもしれませんが、金融投資をしている人には大きく関わりがある税金です。どのような税金なのかまとめていきたいと思います。
株式等譲渡所得割とは?
金融機関で開設した源泉徴収ありの口座内で発生した上場株式等の売却益にかかる住民税です。都道府県に納める地方税のひとつになります。
上場株式等の主なものは以下のとおりです。
- 上場している株式
- 投資信託でその設定に係る受益権の募集が公募により行われたもの
- 特定投資法人の投資口
- 特定目的信託の社債的受益権
- 特定公社債
国税もかかっている
給与所得や事業所得も所得割(地方税)と所得税(国税)がかかっていますが、以上の株式譲渡所得割にも、配当割(地方税)だけでなく、所得税(国税)もかかっています。
株式等譲渡所得割を納めるのは金融機関
給与から天引きされる所得税や住民税は会社が本人の代わりに納付をしています。この方法を特別徴収といいますが、株式等譲渡所得割も同様に特別徴収をしています。
金融機関はその口座内での売却取引が行われるたびに損益を計算して、利益があれば税金の徴収を行います。反対に損失があれば、すでに徴収した税金から還付を行います。結果として1年間で利益が発生すれば、金融機関はそれを納税者の代わりに税務署や各都道府県に納付をしています。
金融機関から送られてくる年間取引報告書などに天引きされた税金を確認することができます。
損失は配当金とも相殺される
配当金を受け取ったときにも税金が天引きをされていますが、1年間で株式の売却の損失が同じ口座であれば、配当金とで相殺が行われます。年末に手続きが行われ、天引きされていた配当金の税金が還付が行われます。
配当金の受け取りと株式の売却損が異なる口座であっても確定申告をすることによって、還付を受けられます。
源泉徴収なしを選択すれば税金の徴収はされない
このような形で税金が徴収されるのは源泉徴収ありの口座を選択した場合に限ります。源泉徴収なしを選択した場合、口座内で株式等の売却で発生した税金の徴収や還付はありません。ただし、源泉徴収なしの口座であっても配当金を受け取ったときの税金は徴収されます。
税率は?
株式等譲渡所得割は年間の所得(利益)の金額から税率をかけて計算します。税率は以下のとおりです。
税金 | 税率 |
株式等譲渡所得割 | 5% |
所得税及び復興特別所得税 | 15.315% |
利益が発生すれば合計で20.315%の税金が天引きされます。
基本的には確定申告や住民税の申告は必要ない
このように金融機関が代わりに納めている税金となっているため、株式等譲渡所得割について確定申告や住民税の申告をする必要はありません。
源泉徴収なしの口座の場合、取引の段階では税金の天引きが行われませんが、1年間で利益が出たときには所得税の確定申告(もしくは住民税の申告)をして税金を納めなくてはならないので、結果として源泉徴収なしの方が手間がかかったということもあります。
損失が出たときは確定申告をした方がいい
1年間の取引で売却損が発生したとき確定申告をすることによって、損失を翌年以降3年間繰り越すことができます。翌年以降の取引で利益が発生したときは、確定申告を行い、その繰り越した損失と相殺をすることによって金融機関を通して納めていた税金の還付を受けることができます。
必ず確定申告をしなければならないというわけではありませんが、3年間も繰り越せるので、今後の取引で利益を出た場合に備えて確定申告をした方がいいです。
複数の源泉徴収ありの口座を持っている場合
複数の金融機関の源泉徴収なしの口座で取引をしているとき、1年間の株式の取引が、一方で損失が発生し、他方で利益が発生したとき、損益を相殺されることはありません。必ず確定申告をしなければならないというわけではありませんが、このような状況では確定申告をすることによって税金の還付が見込めます。
非課税となる株式等譲渡所得割
金融機関でNISA(少額投資非課税制度)の口座を開設し、その口座で買い入れた年間120万円までの株式等の売却にかかる株式等譲渡所得割はかかりません。20歳未満を対象とするジュニアNISAも同様です。
法人に株式等譲渡所得割はかからない
株式等譲渡所得割(地方税)がかかるのは個人だけです。法人の口座で行った株式等の売却で発生した株式等譲渡所得割に所得税の15.315%はかかりますが、株式等譲渡所得割はかかりません。利子割などと同じ扱いになります。
源泉徴収ありは他の面で有利になる
株式の売却益も所得のひとつである
給与所得や事業所得など所得は10種類ありますが、株式の売却益も譲渡所得のひとつになります。
確定申告をしていない所得は合計所得金額や総所得金額等には加算されない
源泉徴収ありの口座で取引を行えば、そこで税金の計算が完了するので確定申告をする必要はありません。このような確定申告をしなかった所得は合計所得金額や総所得金額等の計算から外れます。
扶養や健康保険などに影響する
合計所得金額や総所得金額等は扶養や国民健康保険料、寡婦(寡夫)、住宅を購入売却したときの特別控除の適用など様々な面で判定される金額です。
源泉徴収なしの口座を選択していたばかりに確定申告を行った結果、合計所得金額や総所得金額等が上がってしまい、様々な制度が適用できなくなったり、保険料が上がってしまって損してしまうということもあります。特別な理由がなければ源泉徴収ありを選択したほうがいいです。