個人の住民税は均等割や所得割の他に配当割という税金もございます。あまり聞かない名前かもしれませんが、金融投資をしている人には大きく関わりがある税金です。どのような税金なのかまとめていきたいと思います。
配当割とは?
配当割とは上場株式等の配当金にかかる住民税です。都道府県に納める地方税のひとつになります。
上場株式等の配当金の主なものは以下のとおりです。
- 上場している株式の配当
- 投資信託でその設定に係る受益権の募集が公募により行われたものの収益の分配
- 特定投資法人の投資口の配当
- 特定目的信託の社債的受益権の配当
- 特定公社債の利子
その他、特定口座外の割引債の償還差益も配当割の対象となります。
国税もかかっている
給与所得や事業所得も所得割(地方税)と所得税(国税)がかかっていますが、以上の配当金にも、配当割(地方税)だけでなく、所得税(国税)もかかっています。
配当割を納めるのは金融機関
給与から天引きされる所得税や住民税は会社が本人の代わりに納付をしています。この方法を特別徴収といいますが、配当割も同様に特別徴収をしています。
配当金が入金されるとき、配当割と所得税はすでに差し引かれていて、金融機関はそれを納税者の代わりに税務署や各都道府県に納付をしています。
金融機関から送られてくる取引報告書などに天引きされた税金を確認することができます。
税率は?
配当割はその配当の金額から税率をかけて計算します。税率は以下のとおりです。
税金 | 税率 |
配当割 | 5% |
所得税及び復興特別所得税 | 15.315% |
合計で20.315%が天引きされています。つまり、配当の79.685%分が口座に入金されています。
基本的には確定申告や住民税の申告は必要ない
このように金融機関が代わりに納めている税金となっているため、配当割について確定申告や住民税の申告をする必要はありません。
配当控除や配当割額の控除を受ける場合は
配当控除や配当額の控除を適用するときは所得税の確定申告をしなければなりません。所得税の確定申告は住民税の申告も兼ねているので、自動的に住民税の控除も行われます。
住民税の申告でも配当控除や配当額の控除を受けることはできますが、所得税での控除を受けることができません。
非課税となる配当
金融機関でNISA(少額投資非課税制度)の口座を開設し、その口座で買い入れた年間120万円までの上場株式等の配当の配当割はかかりません。20歳未満を対象とするジュニアNISAも同様です。
法人に配当割はかからない
これらの配当金などに配当割(地方税)がかかるのは個人だけです。法人が所有している株式などの配当金に所得税の15.315%はかかりますが、配当割はかかりません。利子割などと同じ扱いになります。
特定公社債とは?
上記の配当割がかかる一覧にあった特定公社債とは、国債、地方債、外国債、外国地方債、公募公社債、上場公社債などのことを言います。
利子に配当割がかかる
かつては特定公社債の利子には利子割がかかっていました。しかし、税制改正により、平成28年1月1日以降に受ける特定公社債の利子にかかる利子割は廃止され、新たに配当割が課されるようになりました。
利子割から配当割に変わり、役所や金融機関内での内部処理に変更はありますが、税率も同じ5%なので、配当を受け取る人に大きな変更点はありません。
確定申告で配当控除を適用すると逆に損をする?
確定申告をしない場合の配当割は5%
配当金について、確定申告なしを選んだ場合、配当金を受け取ったときに差し引かれた配当割5%、所得税15.315%だけで納税が完結します。
確定申告をすると10%になる
配当控除を適用するために確定申告をすると、配当金も配当所得として総合課税となり、給与所得や事業所得と一緒の総所得金額に加算されます。そのため、配当金部分の住民税は10%、所得税は累進課税になるので5~45%かかってしまいます。
配当控除は配当金から控除率をかけて計算します。その人の所得や金融商品の区分によっても控除率が変わりますが、一番高い控除率で所得税10%、住民税2.8%です。累進課税の所得税が高いと配当控除を適用してもかえって多く税金を払っていたという場合もあります。
国保、後期高齢者保険も高くなる
また、配当控除を適用すると総所得金額が高くなるので、国民健康保険や後期高齢者医療保険に加入している人は、これらの保険料も上がってしまいます。そのため、慎重にシミュレーションをすることが望ましいです。
税制改正で改善された?
税制改正で平成29年分の住民税から「住民税課税方式の選択」ができるようになりました。
これまで、所得税で配当所得を総合課税で確定申告をした場合、住民税も配当所得は総合課税として扱われていましたが、申出書を住んでいる役所に事前に提出することによって、住民税に対して申告不要制度の適用できるようになりました。
「住民税課税方式の選択」を適用することにより、住民税では配当控除を受けられませんが、住民税率は金融機関から差し引かれた5%だけになり、国民健康保険料や後期高齢者医療保険料にも影響することはありません。
適用方法
5月、6月に送られてくる住民税の決定通知書が届く前に「上場株式等の所得に関する住民税申告不要等申出書」を住んでいる役所に提出することにより「住民税課税方式の選択」の制度の適用を受けられます。
住んでいる役所のホームページなどで申出書を確認することができます。