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一括償却資産とは?限度額や要件について分かりやすく解説!

個人事業と法人が対象となる一括償却資産についてまとめました。少額減価償却資産の特例と混同しやすいので、その違いも説明しています。

一括償却資産とは?

基本的に10万円以上のものは耐用年数に応じて経費にする

事業で使用する備品や機械、ソフトウェアなどを購入したとき、1点の金額が10万円を超えるものについては、基本的に一度に全額経費にすることはできません。

国税庁が種類ごとに耐用年数を設定しており、その年数に応じて毎年経費にします。耐用年数は短いもので3、4年、長いもので50年です。

10万円以上20万円未満のものは3年で経費にできる制度

一括償却資産とは、10万円以上20万円未満のものは耐用年数に関わらず、毎年3分の1ずつ経費にすることができるという制度です

月割はせず、3分の1ずつ経費にできる

例えば、耐用年数3年のものを期末に取得した場合、その事業年度では1か月しか使用していないことになるので、取得した初年度は定額法なら36分の1の金額しか経費にすることができません。

一方、一括償却資産は取得した月は関係ありません。期末に取得したとしても初年度から3分の1を経費にすることができます1。経費化を早く進めることができます。

1点あたりの取得金額で判断する

複数まとめて購入した場合には、10万円以上20万円未満かどうかは、1点ごとの金額で判断します。

例えば、36万円でパソコンを2台購入したとき、その内訳が18万円×2台であるならば2台とも適用できます。一方、12万円と24万円という内訳なら12万円のパソコンしか適用できません。

対象となるもの

減価償却資産に含まれるものは全て対象となります。主な減価償却資産は次の通りです。

区分 対象となる資産
有形 備品、器具工具、機械、装置、車両、運搬具、建物、附属設備、構築物など
無形 ソフトウェア、営業権(のれん)、特許権、商標権、意匠権など
その他 農業用の動物や植物

業務でつかう備品や機械以外にも店舗や事務所、作業場の内装工事や電気工事にも使えたりと、広い範囲で対象となります。備品や機械、車両など中古で購入したものも20万円未満なら適用できます。

取得金額と消費税について

税込か税抜のどちらで10万円以上20万円未満を判断するかについては、その事業者や法人の状況によって異なります。まず、始めに消費税の申告があるかどうかで分かれます。

消費税の申告がない人(免税事業者)

消費税の申告がない人は取得したものが10万円以上20万円未満かどうかは消費税込みの金額で判断します。

消費税の申告がある人(課税事業者)

法人税や所得税の申告と一緒に消費税の申告がある人は、消費税の会計処理の方法に応じて判断します。

  • 税込経理 → 消費税込みで判断
  • 税抜経理 → 消費税抜きで判断

税抜190,000円の備品を購入した場合、税抜経理では対象となりますが、税込経理では20万円以上になるため対象となりません。

貸借対照表に「仮受消費税」や「仮払消費税」の勘定科目がある場合は税抜経理、ない場合は税込経理となります。

事業者の要件や限度額はない

個人と法人どちらも適用できる制度ですが、要件は特にありません。青色申告でも白色申告でも適用できます。また、限度額も設けられていません。

個人と法人で扱いが異なる点

個人と法人どちらも適用できる制度ですが、1つだけ異なる点があります。

個人については、開業1年目などで事業期間が12か月未満であっても、取得金額の3分の1を経費にすることができます。

一方、法人については事業期間で計算します。そのため、設立1年目などで事業期間が12か月未満になる場合は、取得金額の3分の1を経費にすることはできません。月割りした金額となります。例えば、事業期間6か月の設立初年度に18万円の備品を購入した場合、初年度の経費の計上額は18万円×6か月/36か月=3万円となります。使用した月数ではなく、事業期間の月数で計算するので注意してください。

一括償却資産と少額減価償却資産の特例

30万円未満を全額経費にできる少額減価償却資産の特例

似たようなものとして少額減価償却資産の特例という制度があります。これは青色申告をしている個人事業主、資本金1億円以下の法人が取得金額が10万円以上30万円未満のものを取得した年に全額経費にできるという制度です。

詳しくはこちらでまとめています。

一括償却資産を適用するケースは多くない

一括償却資産よりも節税効果が高いので、利益が発生したときは少額減価償却資産の特例は優先して適用されます。そのため、一括償却資産を適用するケースというのはあまり多くありません。

ただし、次のような場合は、少額減価償却資産の特例を使うことができないので、一括償却資産が適用されます。

  • 少額減価償却資産の特例の限度額を超えてしまった場合
  • 青色申告ができず白色申告の場合
  • 個人や中小企業の要件を満たさない場合

一括償却資産の適用を受ける方法

仕訳と申告書

制度の適用を受けるには、会計で一括償却資産用の仕訳を行い、申告書に対象となる資産を明記します。

詳しくはこちらでまとめています。

  1. ただし、法人のみについては設立初年度などで事業期間が12か月未満のときは月割で計算を行います。

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