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住宅取得等資金贈与の非課税の特例とは?贈与税の計算機付き!

マイホームの購入を検討している人は是非おさえておきたい住宅取得等資金贈与の非課税の特例についてまとめてみました。

相続税の節税対策にもなる大きな特例制度です。

住宅取得等資金贈与の非課税の条件

両親などからマイホーム(戸建てやマンション、2世帯住宅)のための資金の贈与を受けたとき(援助されたとき)、一定の金額まで贈与税がかからなくなるという特例です。

この制度を受けるためには、次の要件をすべて満たしていなければなりません。資金をあげた人を贈与者、もらった人を受贈者として説明します。

  1. 贈与者は受贈者の直系尊属であること
  2. 受贈者は贈与を受けた年の1月1日時点で20歳以上であること
  3. 受贈者の合計所得金額が2,000万円以下であること
  4. 贈与を受けた全額を住宅取得資金に充てていること
  5. 贈与を受けた翌年の3月15日までに住宅を取得し居住していること
  6. 親族などの身内によって取得、建築した住宅ではないこと
  7. 床面積が50㎡以上240㎡以下であること

ひとつずつ詳しく説明します。

1.贈与者は受贈者の直系尊属

直系尊属とは両親や祖父母のことを指します。つまり、資金をあげる人はもらう人の両親や祖父母でなければなりません。養子縁組したときの養母や養父も該当します。贈与者が2名以上でも問題ありません。

家族であっても、おじおばや兄弟姉妹、配偶者の両親(義父母)から資金をもらった場合には適用を受けられない制度です。

2.1月1日時点で20歳以上

受贈者の年齢は直前の1月1日で判定します1。贈与を受けた日が20歳であっても適用を受けられないことがあるので注意してください。

贈与者(両親、祖父母)には年齢の要件はありません。

3.合計所得金額が2,000万円以下

合計所得金額2,000万円以下は言いかえると、1年間の給与の収入が2,220万円以下ということです。年収2,220万円を超える高所得者の人は制度の適用を一切受けられません。

事業所得や不動産所得など給与以外に所得がある人の合計所得金額についてはこちらのページでまとめています。

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贈与者(両親、祖父母)の所得の要件はありません。

4.全額を住宅取得資金に充てている

資金全額が土地や新築住宅、中古住宅、増改築(リフォーム)に充てていなければなりません。

住宅の建築のために、贈与より先行して購入した土地の資金は認められています。

5.翌年の3月15日までに取得居住

贈与を受けた翌年の3月15日までに、取得して居住していなければなりません2

贈与のタイミングによっては適用できない

他の要件を満たしていても、贈与した年月日によっては、そもそもこの制度が使えないという場合もあります。

例えば下の図のように、贈与した日が平成29年12月だと、平成30年3月15日までに住宅の取得、入居をしていなければ、特例を適用することができません。

一方、平成30年1月に贈与をすれば、1年後の平成31年3月15日までに住宅の取得、入居していれば、特例を適用することができます。

計画的に贈与を行うようにしましょう。

6.身内によって取得、建築していない

建築、増改築の請負業者や物件の購入先が、自分や配偶者の親族といった身内ではないことが条件となります3

7.床面積が50㎡以上240㎡以下

床面積は登記簿謄本で判断します4。50㎡未満のワンルームマンションや240㎡を超えるお屋敷、豪邸などは認められません。

土地建物の贈与はダメ

資金の贈与を受けてマイホームを新築、購入、増改築したときに適用できる制度です。

両親や祖父母から土地や建物を譲り受けたときには、適用することはできず、そのような場合の贈与税の特例制度もありません。

贈与税の金額と非課税の特例

贈与税が非課税になる金額

特例を適用して贈与税が非課税になる金額は、購入や建築の契約年月日、省エネ等住宅に該当するかどうかで決まってきます。

購入、建築の契約年月日 省エネ等住宅 それ以外
平成28年1月~令和1年9月 1,200万円 700万円
令和1年10月~令和2年3月 3,000万円 2,500万円
令和2年4月~令和3年3月 1,500万円 1,000万円
令和3年4月~令和3年12月 1,200万円 700万円

受贈した金額が非課税額以内だった場合には、贈与税は一切かかりません。

省エネ等住宅とは

取得した住宅に省エネや免震、バリアフリー対策が行われていて、以下のいずれかに該当するとき「省エネ等住宅」と認められています。

  • 断熱等性能等級4
  • 耐震等級2もしくは3
  • 免震建築物
  • 一次エネルギー消費量等級4もしくは5
  • 高齢者等配慮対策等級3~5

該当する場合には、証明書が発行されます。住宅メーカーなどに確認しましょう。

いずれにも該当しない場合には、上の表の「それ以外の住宅」となります。

非課税枠は3年以内の贈与税の加算がされない

贈与者が亡くなるまでの3年以内に行った贈与は、なかったものとみなされ、贈与財産も相続税の計算に加えられます。

ただし、住宅取得等資金贈与の非課税枠で行われた贈与は、その後3年以内に贈与者が亡くなっても、相続財産に加算されません。相続税の対策としても有効です。

非課税枠を超えたとき

贈与を受けた金額が非課税額を超えてしまった場合には、超えた部分に通常の贈与税がかかります。

通常の贈与税の計算では110万円が非課税になります。住宅取得等資金贈与の非課税の特例を適用した場合も110万円の非課税が適用できるので、実際には、表の金額+110万円までが非課税になります。

その年に受けた贈与が住宅取得資金だけだった場合の計算機を用意しました。贈与を受けた金額と適用できる非課税を入力すると贈与税額が求められます。

相続時精算課税制度との併用もできる

住宅取得等資金贈与の非課税の特例は、相続時精算課税制度と併用で適用をすることができます。

この場合、表の金額+2,500万円までは非課税になりますが、非課税を超える部分の贈与は相続財産になってしまうため、贈与税がかからなくても相続税がかかってしまうことがあります。

特例の適用を受ける方法

贈与税の申告をする

贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までに贈与税の申告を行うことによって特例の適用が受けられます。非課税範囲内で贈与税がかからない場合であっても申告しなければなりません。

贈与税の申告は受贈者(資金をもらった人)が行います。贈与者は一切関与しない申告です。

3月15日までに申告しなければならない

特例の適用の絶対条件となるのが、3月15日の期限までに申告を行うことです。

期限を過ぎた場合、特例の適用は一切受けられず、場合によっては多額の贈与税や延滞税、無申告加算税がかかってしまうことがあります。

申告に必要な書類

贈与税の申告に必要な主な書類は以下のとおりです。

  • 贈与税の申告書第一表
  • 贈与税の申告書第一表の二
  • 特例適用のチェックリスト
  • 受贈者のマイナンバー
  • 以下のことを証する受贈者の戸籍謄本
    1.受贈者の生年月日
    2.贈与者が受贈者の直系尊属に該当すること
  • 受贈者の源泉徴収票(確定申告をしていれば不要)
  • 売買契約書の写し
  • 建物の登記事項証明書(登記簿謄本)
  • 土地の登記事項証明書(登記簿謄本)
  • (省エネ住宅等に該当することを証明する書類)

たくさんある要件を全て満たしていることを証明しなければならないため、税務署や法務局、住宅メーカーなど様々なところから書類を用意する必要があります。贈与税の申告は余裕を持って行うようにしましょう。

贈与税の申告書の書き方詳しくはこちらのページでまとめています。

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中古物件、増改築、併用住宅の要件

この非課税の特例制度は、新築の戸建てやマンション以外にも適用することができます。

中古物件

中古一軒家や中古マンションの取得にも適用することができます。上の基本的な要件に加えて、以下の3つの要件のうち、どれかを満たしていないとなりません。

  • 築年数が20年以内(耐火建築物は築25年以内)であること
  • 耐震基準を満たす証明がされたもの
  • 1と2どちらにも該当しない場合、耐震改修を行い、贈与を受けた翌年の3月15日までに耐震基準を満たす証明がされたもの

個人間の売買でも可能

親族ではない個人から購入した場合にも適用を受けることができます。非課税限度額については「消費税8%」に当てはめます。

増改築

基本的な要件とともに、増改築の工事費が100万円以上であれば適用することができます。

自宅兼事務所

個人事業主や中小法人の経営者などは、取得した住宅の一部が事務所や作業場など事業の用に供している場合があります。この場合、床面積の2分の1以上が生活スペース(居住の用に供する部分)であれば適用することができます。

増改築の場合、工事費の2分の1以上が生活スペース(居住の用に供する部分)に係るものであれば適用することができます。

  1. 受贈者が海外に住んでいて日本に住所がなかったり、外国人であったりする場合には、適用できないことがあります。税務署に相談しましょう。
  2. 中古物件や、増改築については、3月15日までに引き渡し、居住をしていなければなりませんが、新築に関しては3月15日までに完成していなくても、その時点で建物がある程度完成していて、12月31日までに居住する見込みがあれば適用を受けることができます。
  3. 請負業者や購入先が遠戚や内縁関係にある配偶者の親族である場合には、税務署に相談しましょう
  4. 贈与によって海外の住宅を購入した場合には適用できません。

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