税金制度はとても複雑で分かりづらいですが、似たような言葉が多くあることがひとつの原因です。合計所得金額、総所得金額等、総所得金額、この3つは特にややこしい言葉で、所得税での使われ方も異なります。
この3つの金額の違いや共通点をまとめてみました。
ひとつひとつについては別のページで詳しくまとめています。
3つの違い
名称から所得を合計したものということは想像がつくと思いますが、その所得の範囲がそれぞれ異なっています。具体的な説明としては以下のようになります。
総所得金額と総所得金額等
総所得金額 + 分離課税の所得 = 総所得金額等
- 山林所得
- 退職所得
- 土地や建物の譲渡所得
- 株式等の譲渡所得
- 先物取引にかかる雑所得(FXなど)
総所得金額等と合計所得金額
総所得金額等 - 繰越控除額 = 合計所得金額
- 純損失や雑損失の繰越控除
- 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除
- 特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除
- 上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除
- 特定中小会社が発行した株式に係る譲渡損失の繰越控除(エンジェル税制)
- 先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除
少し分かりづらいかもしれませんが、表にするとこのようになります。
総所得金額 | 総所得金額等 | 合計所得金額 | |
総合課税の所得 | 対象となる | 対象となる | 対象となる |
分離課税の所得 | 対象とならない | 対象となる | 対象となる |
繰越控除 | 行う※ | 行う | 行わない |
※総所得金額で計算されるのは、雑損失と純損失の繰越控除のみになります。
大抵の場合は3つの金額は同じになる
分離課税の所得があったり、繰越控除額があることはかなりレアなケースです。大抵の場合、申告する所得は総合課税だけになります。そのため、ほとんどの人は総所得金額、合計所得金額、総所得金額等が同じ金額になります。
要件となっている制度
所得税で3つの金額が使われているのはこんなところにあります。
合計所得金額
- 扶養控除
- 配偶者控除、配偶者特別控除
- 寡婦控除、寡夫控除
- 住宅取得資金の非課税
- 住宅借入金等特別控除
- 特定増改築等住宅借入金等特別控除
- 認定住宅新築等特別税額控除
- 住宅特定改修特別税額控除
- 居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除
- 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
合計所得金額は大きく分けて2つに分かれます。
1つ目は所得控除の適用の判定の要件となっています。それぞれに上限となる合計所得金額が定められていて、それを上回らなければ適用することができます。
2つ目は住宅関係の特例制度の適用の判定の要件となっています。広く一般の人に住宅を購入してもらうために、国は様々な特例制度を用意しています。年収何千万円、何億円という超大金持ちの人が適用できないようにするために、上限となる合計所得金額を定めています。
総所得金額等
- 医療費控除
- 寄附金控除
- 雑損控除
これらの所得控除は支出した金額から計算を行って所得控除額を算出します。その計算の過程で総所得金額等が必要になります。
計算式に総所得金額等が加えられていることにより、申告する人の所得に見合った控除ができるようになっています。
総所得金額
- なし
総所得金額が要件となる制度はありません。しかし、所得税を計算する上では大事な計算過程の金額となります。
共通点
少しずつ違っている3つの金額ですが、これらの共通点を挙げてみました。
所得控除前の金額である
扶養控除や配偶者控除などの所得控除がありますが、3つの金額は全て所得控除額を差し引く前のものです。
申告をしていない所得は含めない
源泉徴収ありの口座やで株式の売買をしたり、配当金を受け取っていたりしている場合は、金融機関が自動的に所得税や住民税の計算をしてくれるため、それらの所得を確定申告書に記載する必要はありません。
また、年末調整をしている会社員の人は、副業などで給与以外に所得があったとしても、その利益が20万円以下なら確定申告をしなくてもいいという制度があります。
このような申告をしなかった所得は合計所得金額の計算からは除外されます。まとめると以下のようになります。
- 源泉徴収ありの口座で行った株式等の売買
- NISA口座で行った金融商品の売買
- 所有している株式等の配当金
- 口座に入金された利子や利息
譲渡所得の特別控除は含めない
合計所得金額と総所得金額等に限ったことになりますが、マイホームを売った場合の3,000万円控除や収容の5,000万円控除など不動産を売却した時の特別控除は所得金額から差し引きません。