長らく勤めてきた会社から支払われる退職金にも一定の要件を満たすと所得税や住民税がかかります。毎月の給与や賞与と同様に会社から支払われるものですが、税金の計算の仕方は大きく異なります。ここでは所得税や住民税の計算方法などまとめていきたいと思います。
退職金にかかる所得税や住民税を求める
退職所得を計算する
税金を計算するためには、まず受け取った退職金から退職所得を求めます。退職所得が少なければ税金も少なくなります。計算式は以下のようになります。
計算式
退職所得 =(退職金の金額 - 退職所得控除額)× 0.5
- 退職所得の金額は千円未満の端数は切り捨てます。
- 勤続年数5年以下の会社役員、議員、公務員等は「×0.5」をすることができません。
退職所得がマイナスになった場合はゼロとします。
退職所得控除額を計算する
退職所得を求めるためには、「退職所得控除額」をはじめに計算します。
退職所得控除額は退職金から差し引く経費のようなものです。退職所得控除額が大きいと退職所得は低くなります。退職所得控除額はその会社に勤めていた年数から計算します。1年未満の端数がある時は切り上げをして、勤務年数を整数にします。1日でも端数があれば切り上げをします。
例えば、その会社で5年と1日勤務をした場合、退職所得控除額の計算では勤続年数は6年とします。
勤続年数 | 退職所得控除額の計算式 |
20年以下 | 40万円 ✕ 勤続年数(最低80万円) |
20年超 | 800万円 + 70万円 ✕ (勤続年数-20年) |
※障害者になったことが原因で退職をした場合は計算した金額に100万円を加算します。
退職所得控除額は1年ごとに40万円加算されます。勤務年数21年目からは退職所得控除額は1年ごとに70万円加算されます。勤続年数が1年でも退職所得控除額は80万円となります。
所得税を計算する
上で計算した退職所得金額を下の表に当てはめて所得税を求めます。所得税には復興特別所得税も含まれており、累進課税制度となっているため、税率が段階式になっています。
計算式
- 退職金の所得税 = A×B-C
A 退職所得金額 | B 税率 | C 控除額 |
1千円以上195万円以下 | 5.105% | 0円 |
195万円超330万円以下 | 10.21% | 99,547.5円 |
330万円超695万円以下 | 20.42% | 436,477.5円 |
695万円超9,000万円以下 | 23.483% | 649,356円 |
900万円超1,800万円以下 | 33.693% | 1,568,256円 |
1,800万円超4,000万円以下 | 40.84% | 2,854,716円 |
4,000万円超 | 45.945% | 4,896,716円 |
※1円未満は切捨てます。
退職所得金額がゼロならば、所得税はかかりません。
住民税を計算する
道府県民税と市町村民税をまとめて住民税といいます。退職所得の4%が道府県民税、6%が市町村民税となるため、合わせて10%が住民税となります。
上で計算した退職所得に10%を掛けた金額が退職金にかかる住民税となります。所得税のように段階的に税率が変わることはなく、全て一律の税額です。
計算式
退職金の住民税 = 退職所得 ✕ 10%
本来は、道府県民税(4%)と市町村民税(6%)をそれぞれ計算してから求めるため、10%で計算すると100円程度のズレが生じる場合があります。
退職所得はすべての市区町村で10%である
神奈川県や名古屋市、豊岡市は個人の住民税の所得割の税率は他とは違いで10%ではありません。しかし、それらの地域も退職金にかかる住民税の税率は10%になります。
所得税がかからなければ住民税もかからない
退職所得金額がゼロならば住民税もかかりません。つまり、所得税がかからなければ住民税もかからないということになります。
自動計算フォーム
計算式が複雑なので、自動計算フォームを作成しました。退職金の金額と勤続年数を入力すると所得税と住民税の金額が計算されます。端数処理も行われているため、正確な金額が求められます。
[CP_CALCULATED_FIELDS id="18"]
死亡したときの退職金
死亡退職した人にも退職金が支払われた場合、その退職金は退職所得とならないため、所得税や住民税は一切かかりません。しかし、相続税の課税対象となるので、退職金によって相続税が発生する可能性もあります。
退職金は非常に大きな金額になることもあるので、相続税に大きな影響を及ぼす場合もあります。お忘れないようにしてください。
退職金にかかる所得税や住民税の納付の方法
税金は会社が納める
所得税や住民税は退職金から差し引かれ、会社が税務署や各自治体に納付します。本人が退職金にかかる税金の管理をする必要はありません。
給料にかかる所得税や住民税は1年を終えないと確定することができませんが、退職金にかかる所得税や住民税は他の所得から独立しているため、退職金の金額が確定した時点で税金を確定することができます。
基本的に確定申告をする必要はない
会社が退職金にかかる税金の計算をするため、基本的に確定申告をする必要はありません。詳しくはこちらでまとめています。