給与所得者の特定支出控除の特例についてまとめてみました。もしかしたらサラリーマンのあなたも適用できる制度かもしれません。
特定支出控除とは?
会社員に特定支出があるときに適用できる
特定支出控除とは、給与所得者が職務や業務に関わってくる支出を自腹で負担しているときに、その金額に応じて一定の税金の優遇を受けるという特例です。
つまり、会社員(サラリーマンやOL)の人も、要件を満たせば経費を計上することができるという制度です。会社の役員も該当します。
特例支出の範囲
対象となる支出は6種類に区分されています。
会社で精算した費用は対象になりません。ただし、費用の一部を会社や自治体などから補填を受けたときは、その補填された金額を差し引いた本人の負担分が認められます。
通勤費
通勤のための交通機関の通勤定期代の支出です。多くは会社で精算をしているので、個人が負担をしている場合は少ないと思います。もし、会社が通勤費の一部しか負担をしていない場合は、本人が負担している部分が該当します。
転居費
転勤にともなう引っ越しのための支出です。これも会社で精算をする場合が多いので、個人が負担をしている場合は少ないと思います。
研修費
職務に必要な技術や知識を得るための研修の支出です。これも会社で精算する場合が多いので、個人が負担をしている場合は少ないと思います。
資格取得費
職務に必要な資格を取得するための支出です。具体的には、自動車免許、簿記、英語検定、医師、弁護士、司法書士、税理士、公認会計士などが該当します。
難関な資格だと、専門学校に通ったりするために大きな金額を負担することもあるので、ケースとしては比較的多い部類に入ります。
帰宅旅費
単身赴任している人が配偶者や子どもの住む家に帰るときの旅費交通費です。認められるのは1ヶ月に4往復までです。会社が負担する場合もありますが、自腹で負担している分は新幹線代や飛行機代などが対象となります。
配偶者や子供が単身赴任者のところへ行くための旅費交通費は認められません。
勤務必要経費
勤務必要経費には3つの経費が含まれています。
- 図書費-
職務に関連する書籍、新聞、定期刊行物の購入の支出です。 - 衣服費-
職務で着用する制服、作業服の購入の支出です。普段スーツを着用して仕事をしている人は、業務で使用するスーツや革靴の購入も対象となります。 - 交際費-
職務上関係のある者に対する接待、供応、贈答のための支出です。あまりケースとしてはありませんが、取引先に自腹で接待や贈り物をしたときの支出が対象となります。
勤務必要経費だけは支出の上限額が65万円と定められています。
勤務先から証明書を発行してもらわなければならない
この制度の適用を受けるには、給与支払者(勤務先)から経費ごとに証明書を発行してもらわなければなりません。
例えば、図書費、衣服費、交際費、資格取得費がある場合には、4枚の証明書を発行してもらう必要があります。
証明書の雛形は国税庁のwebサイトにアップロードされています。
給与所得者の特定支出控除に関する証明書
上の部分は本人が記入し、下の部分を給与支払者(勤務先)が記入します。
一人で完結できない
スーツ代や書籍代、資格取得費を経費にできるという、サラリーマンにとって魅力的な特例制度ですが、適用を受けるには支出の明細を会社に提示して証明をもらなわければならないため、非常にハードルが上がります。
会社が推奨してこの制度の適用を呼びかけていれば証明を受けやすいですが、誰もいない中、一人だけ証明をもらいに行くというのは難しいという人も多いと思います。
そもそもこの制度を知っている人がいないため、制度の説明をするのも面倒だということもあります。
控除額の計算方法
計算式
自腹で支出した金額がそのまま控除額とはならず、決められた計算式から求めます。
給与所得者の全ての人が適用できる給与所得控除額に上乗せした形で控除額が計算されます。
計算式
- 特定支出控除額 =
特定支出額 - 給与所得控除額 × 0.5
特定支出が給与所得控除額の0.5%を下回るときは、適用を受けられません。
計算機
給与所得控除額はその人の給与収入(年収)から計算されます。計算機を用意しました。給与収入と特定支出の金額を入力して「計算ボタン」をクリックすると、特定支出控除額が求められます。
[CP_CALCULATED_FIELDS id="91"]
特定支出はあるが、適用は受けられないという場合は多いです。
制度の適用を受ける方法
確定申告で受ける
年末調整が終わったあと、翌年の2月3月ごろに自分で確定申告書を作成して税務署に提出します。申告書第一表と第二表、特定支出に関する明細書に必要事項を記入することによって適用を受けることができます。
詳しくはこちらのページでまとめています。
領収書と証明書を提出する
支出があったことを証明するために、申告書と一緒に特定支出の領収書も一緒に税務署に提出します。勤務先の押印がある証明書も提出します。
コスパが良くない制度
数十万円の特定支出があったとしても、そのうち数万円程度しか控除額にならないということもあります。
- 領収書を管理する
- 証明書に会社の押印をもらう
- 確定申告をする
このように特定支出控除の特例を受けるには、いくつかの事務作業を必要としますが、受けられる減税額はそれほど大きくありません。
今後もう少し見直していかないと、広く認知される制度にはなっていかないかもしれません。