個人の住民税は主に所得割と均等割に分かれ、それぞれの性質や課税の計算は大きく異なります。このページでは個人の住民税の所得割についてまとめていきたいと思います。
所得割とは?
所得から計算される
所得割とは、その名の通り前年の所得から税率を乗じて計算される住民税です。所得が高ければ所得割は比例して高くなるので、簡単に言うとその人の稼ぎに応じてかかってくる税金です。
所得割の所得の種類は所得税と同じです。給与や事業、年金だけでなく、退職金や株式や不動産の売買によって生じた所得にも所得割は発生します。
- 利子所得
- 配当所得
- 不動産所得
- 事業所得
- 給与所得
- 退職所得
- 山林所得
- 譲渡所得
- 一時所得
- 雑所得
税率は10%
基本的には所得割の税率は都道府県民税が4%、市区町村民税が6%の合計10%となっています。
税率は一定である
所得税は所得が大きくなるという累進課税制度を採用しており、税率は5%から最大45%までありますが、所得割は全て一律の税率です。所得が2,000万円でも300万円でも税率は同じです。
一部地域は10%ではない
税率は自治体ごとの条例で定めるものですが、国が地方税法で標準税率を示していて、特別な理由ががなければ標準税率を採用します。そのため、ほぼ全ての自治体では所得割の税率は10%ですが、財政上の理由などから10%でない自治体があります。
税率(県民税と市区町村民税合わせて) | |
神奈川県 全て | 10.025% |
名古屋市 | 9.7% |
豊岡市 | 10.1% |
日本で一番税率が高い地域は夕張市と言われていましたが、平成29年より夕張市は10%になりました。
政令市に住む人
税制改正により平成30年から政令市に住む人の所得割の税率が変わりました。
改正前(平成29年まで) | 改正後(平成30年から) | |
道府県民税 | 4% | 2% |
市民税 | 6% | 8% |
道府県民税の税率は増えて、市民税の税率は減りました。政令市の人の所得割が増えるということではなく、税率の内訳が変わっただけです。
政令市は以下のとおりです。
- 大阪市
- 名古屋市(5.7%→7.7%)
- 京都市
- 横浜市(4.025%→2.025%)
- 神戸市
- 北九州市
- 札幌市
- 川崎市(4.025%→2.025%)
- 福岡市
- 広島市
- 仙台市
- 千葉市
- さいたま市
- 静岡市
- 堺市
- 新潟市
- 浜松市
- 岡山市
- 相模原市(4.025%→2.025%)
- 熊本市
所得割を減税する控除
所得にただ税率を乗じて計算したものが所得割ではありません。本人やその生計を一にする親族、配偶者の状況や特定の支払いがあったときに所得割が減税されます。
所得控除
所得控除は所得金額から差し引くことによって所得が圧縮され、所得割も減額されます。所得控除の種類や適用できる要件は年末調整や確定申告のときに計算する所得税の所得控除とほとんど共通していますが、控除の金額が異なっています。
現在、13種類の所得控除があります。
- 基礎控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 扶養控除
- 障害者控除
- 寡婦(寡夫)控除
- 勤労学生控除
- 雑損控除
- 医療費控除
- 社会保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
詳しくはこちらのページでまとめています。
税額控除
税額控除は住民税額(所得割額)から直接差し引きます。所得から税額を乗じて計算したのを「税額控除前所得割額」といい、そこから税額控除を差し引いた金額を「所得割額」といいます。所得控除と同様、所得税と共通するところが多くあります。
現在、6種類の税額控除があります。
- 調整控除
- 住宅借入金等特別控除
- 配当控除
- 寄付金控除
- 配当割額または株式譲渡所得割額の控除
- 外国税額控除
詳しくはこちらのページでまとめています。
所得控除と税額控除
減税するという意味では同じものですが、所得に差し引く所得控除に対して、所得割額(住民税額)に直接差し引く税額控除というところで大きく違います。
所得控除が10万円のとき実際の減税額は税率10%を乗じた1万円となります。一方、税額控除が10万円のとき減税額も10万円になります。
税率が10%でない所得
不動産の売買、株やFXの取引などによる所得の所得割の税率は10%ではありません。
これらの所得に関してはそれぞれ単独で税率を計算します。
区分 | 税率 | |
課税短期譲渡所得 | 一般 | 9% |
軽減 | 5% | |
課税長期譲渡所得 | 一般 | 5% |
特定 | 4%(5%)※1 | |
軽減 | 4%(5%)※2 | |
株式等にかかる課税譲渡所得 | 上場・一般 | 5% |
先物取引に係る課税雑所得等 | 5% |
※1()内は所得が2,000万円を超える部分に適用する
※2()内は所得が6,000万円を超える部分に適用する
所得割の非課税となる範囲
所得がある人全てに所得割がかかるわけではありません。一定の所得までは非課税となります。
扶養親族がいない場合
所得金額が35万円以下であれば所得割が非課税になります。パート・アルバイトの人は給与の年収が100万円以下だとかかりません。
扶養親族がいる場合
扶養親族(16歳以下も含む)や扶養の配偶者がいる場合、所得割が非課税となる所得の上限が上がります。本人と扶養親族・配偶者の人数から計算をします。
計算式
本人と扶養親族・配偶者の合計の人数をAとする
非課税となる所得額 = 35万円 ✕ A + 32万円
均等割がかかることもある
住んでいるところによっても異なりますが、所得割はかからないけど、均等割はかかるという場合もあります。所得割が非課税だからといって必ずしも住民税が非課税になるわけではありません。